8月4日から8日まで開催される、アメリカ経営学会の年次大会(Academy of Management Annual Meeting @Boston)に来ています。コロナ後としては初めて開催される完全対面型(昨年はハイブリッド)で、参加者も多く盛り上がっています。会場がちょうどコロナ直前の2019年に同会が開催されたボストンということもあり、コロナ前に時間が戻ったような感覚です。
AIについては、ちょうど4-5年前からこの学会でもそれを扱うセッションが登場してきていました。当時と比較して、こうした研究が成熟してフェーズが変化していることを実感します。具体的には、三点ほど変化を感じます。
第一に、これまでに公刊された論文数がどんどん増えてきています。5年前は「これからはこんな研究を出していくべきだ/出てくる可能性があり有望だ」だったのが、「これまでにこういう論文が出ていて…」に話のトーンが変化。結果として、ある程度実証研究があることを前提に、それをどう理論的にまとめていけるか、に議論が移っている印象が強いです。学会期間の前半に行われるPDW(Professional development workshop)でも、そうした理論化の試みとして、様々な理論系譜からAIを包含する理論的統合への可能性が提唱されていた印象です。
第二に、そうした研究を広く貫くテーマとして、「Future of Work」が市民権を得ている感をあらたにしました。もちろん、すべてのセッションや研究者がその名前を使っているわけではありません。しかし、そういうネーミングをすることで注目を集めやすく、また研究者側もそうした大きなテーマの下で方向性を作っていこうとする意志を感じます。このテーマの下には、AIだけでなく他の技術(特にブロックチェーン)、多様性と包摂性、持続可能性、あるいはコロナで増加したリモート勤務など、雑多な要素がなんとなく混じっており、定義が一定していません。ただ、ある方向性についてムーブメントを作って学術研究で発信し常識を変えていくことに貢献する、という意味があるようです。
第三に、さまざまな研究者の話を聞く中で、理論とトピック知識の役割を考えさせられました。自分もAIの事例研究をする中で、理論的貢献はもちろん主張しています。しかし、大きな目で見るとそれは後付けで、現象自体を理解したいという動機が先行してきたように反省します。トップジャーナルに論文を連発しつつAIを扱うような研究者の話をAoMであらためて聞くと、理論の発展がメインの動機(であるように聞こえる形)で議論を一貫させており、その点が実務家と完全に役割を分ける分岐になっています。また実際に、そのように自分たちで明言することで、ポジショニングを明確にし、また協調者を募ることができるようになっていると感じます。要は、現象ドリブンの理解だとあくまで個別文脈の話になってしまうので、面白い話はできあがっても国際的に、あるいは他者とそれを一緒に深めていく話にはできにくいのですが、抽象化された理論のレベルで、それを更新していくムーブメントと位置付けると、徒党を組むことができます。そのような、「AI×ある理論分野」の掛け合わせで、新しい研究系譜を形成しようという動きが各分野で活発化しているように感じました。
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