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5月 14, 2023の投稿を表示しています

どうして技術が進んでも雇用がなくならないのか

労働経済学では、技術革新と雇用について活発な研究が行われてきました。今回もこの雇用の観点を扱います。経済学の論文誌から、このテーマで有力な研究者がこれまでの研究を振り返りAIについて述べたものです。これまでの経済学研究のサマリー部分が面白かったので、少し細かめですが今回は詳細まで書いています。 Autor, D. H. (2015). Why are there still so many jobs? The history and future of workplace automation. Journal of Economic Perspectives, 29(3): 3-30. 要するにこの論文は : 技術革新が雇用に及ぼす影響に関する労働経済学の知見を整理し、人工知能のケースについて論じたエッセイ。 ポイント : 「新しい技術が人間を代替し用済みにしてしまう」という懸念は、中世から繰り返されてきた。いま、人工知能の台頭を受けてそのような懸念があらためて広まっている。 これに対して、労働経済学から何が言えるかを整理すると、大きく3つの問いに対する答がある。 これまでも労働を自動化する技術は繰り返し登場してきた。それなのに、なぜ今も雇用はなくなっていないのか? 雇用がなくならないとしても、雇用の質は変わり得る。技術革新によって近年の雇用の質はどのように変わってきたか? AIの台頭は、これまでのトレンドをどう変えるのか? 1.技術と雇用量の関係 労働を自動化する技術が登場しても、いちがいに雇用がなくなるわけではない。その理由は、次のとおりである: ほとんどの職種は、自動化されるタスクAだけでなく、それと組み合わせて必要な自動化できないタスクBとの組み合わせで成り立っている。 そのため、あるタスクAが自動化されれば、その労働者は自動化されなかったタスクBに専門化し、より生産性高く高付加価値なタスクをこなせる。 その結果としてタスクBがより生産性高く高付加価値化すれば、タスクAがなくなってもタスクBに対する社会からの需要がトータルで増える。 この好例が、銀行のATMである。現金を扱い記録をつけるタスクは自動化されたが、代わりに銀行支店のスタッフは営業・カウンセリングなどより高度な業務に集中した。結果として、たしかにATMの登場で支店当たりのスタッフ数は減ったが、支...