「AIが仕事を奪うかもしれない」という議論は、注目を集めてきました。ここで取り上げるのは、そうした関心に対して経営学や周辺の議論をつなぎ合わせて、一つの考え方を提示したものです。 Tschang, F. T., & Almirall, E. (2021). Artificial Intelligence as augmenting automation: Implicatons for employment. Academy of Management Perspectives, 35(4): 642-659. 要するにこの論文は : AIが雇用を代替するか人間を補強するかの論争に関して、関連するさまざまな視点を紹介したエッセイ。 ポイント : AIの台頭は、AIが人間の仕事を代替し多くの職業で雇用が失われる可能性があるとする懸念を高めた。AIと人間の雇用をめぐる議論では、AIが人間の仕事を「代替」するか、「補強」するかの二つの視点が生まれた。どちらの視点にも一理あるが、重要なのはAIが両方を自律的に推し進めることである。 もちろんこれまでにも、技術による雇用代替はずっと続いてきた。ただし、技術が新しい産業や仕事を生むことで雇用を生み出す側面もあるため、差し引きで雇用の規模は維持されてきた。 その一方で、雇用の内訳は変化してきており、これがこの20年の格差拡大と連動している。高度なスキルが要求される職種と、低賃金のためあえて技術投資がされず人間に任される低スキルな職種とに二極化が進み、中間的なスキルや賃金の職種は淘汰されてきた しかしAIは、これまでの技術と違い、自らのルールを作り替えながら加速度的に進化し代替を推し進めるため、新しい職種が生み出されるペースを超えて代替が進んでいく。 デジタル化された企業(その組織能力のほとんどをソフトウェアの形で持つ組織)では、人間の仕事がモジュール化され、技術進化と共に各モジュールが徐々に機械に代替されていく。 人間に残されるタスクは基礎的な認知的タスクであり、パターン認識や手先の器用さが問われるもので、長期間の教育研修が必要なものでなく、賃金プレミアムがほとんど発生しない(人間ならある程度誰でも出来る)。結果として、人間は低スキルで低賃金にあえぐこととなりかねない。究極的には、機械がこうした人間の従業員をモニタリングし...
人工知能などの革新的技術が、経営学をどう変えるかを考えるブログ。 組織論や戦略論はどう変化しているか? 研究手法にAIはどこまで浸透するか? など。