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6月 17, 2018の投稿を表示しています

経営学に「未来ビジョン」はあるか

第35回AI社会論研究会 が、ドワンゴ人工知能研究所で昨日開催されました。 ゲストスピーカーはお二人。今回は 航空自衛隊 の方と SF作家 という、異色の組み合わせでした。普段は聞けない貴重なお話をうかがう機会になりました。 先に、航空自衛隊航空研究センター長の山下愛仁氏より、「 航空研究センターの概要と研究の取り組みについて 」のお話。航空研究センターは、航空自衛隊のシンクタンクとして研究企画を担う組織とのこと(研究領域は防衛戦略・事態対処など)。 未来の航空防衛を考える際、AIは主要国が注目する一つの重要要素である。日本としては、人口減少も考慮しAI/ロボットによる防衛機能の代替を真剣に考える必要がある。但し完全な無人化でなく、人とAIの協働の仕方を考える必要があろう。大筋このようなお話と理解しました。 紹介された米国の未来コンセプトYoutube動画にある、有人機とドローンの連携運用、ドローン編隊、母体から大量の小型子機を射出する自動飛翔体など、まさにSF的空想だった世界が真面目に検討されていました。こうした「SF的未来ビジョン」にはどういう意味があるか、は後半のSF論議で再登場します。 経営学との接点が無い話題ですが、あえて言えばこうした技術戦略の背景で、そもそも戦略を考える組織体制(タコツボに陥らない全体最適)、市場インテリジェンス(競合やサプライヤーの洞察)、戦略策定プロセスの柔軟性(可変性の組み込み)などが重要なのかとは感じました。また昨今では経営「戦略」は一般的な言葉になっていますが、戦略はもともと軍事用語であり、ビジネスの世界でそのアナロジーを使うこと自体が20世紀半ばの斬新なイノベーションだった、という経緯があります。それまでは、組織の形態や管理方法、また管理者の役割に関心が集中し、敵である競合と争って勝つための市場行動への洞察は基本的にありませんでした。今では経営戦略自体が独立して活発に検討され、軍事とはほぼ全く関係なく進化と枝分かれを続けていますが。 そして二番目のスピーカーは、SF作家の長谷敏司氏でした。 演題は、「 SF作品と未来ビジョンについて——未来ビジョンの作り方の一例 」。SF作家は、SF作品という「未来ビジョン」を作る仕事でもある。では未来ビジョン(SF作品)をどう作るのか?を、「ビートレス」という代表作...

拒否権のパラドックス

AI社会共創・ラボの経済経営学グループの勉強会がこの日曜日にありました。 今回は、下記の本を題材に議論しています。 ・アンドリュー・マカフィー/エリック・ブリニョリュフソン著 プラットフォームの経済学:機械は人と企業の未来をどう変える?(2018年、日経BP) 著名な本なので詳細は割愛しますが、一つ議論になったのが、 ・非合理な人間に頼りすぎず、意思決定に人工知能をもっと取り入れていくべき というこの本の冒頭の方の論。 大筋はYESなのですが、現実の組織でそれをやると独特の問題が起こる指摘があります。 それが、Parry et al. (2016)という、経営学では数少ないAIを正面から論じた組織論の理論論文です。 ・Parry, K., Cohen, M., & Bhattachary, S. (2016). Rise of the Machines: A Critical Consideration of Automated Leadership Decision Making in Organizations. Group & Organization Management, 41(5), 571 –594. Parry et al. (2016)は、 AIを組織に導入し人間の意思決定を代替させたときに、どのような影響が生じるか 、メリットとデメリットの両面で論じています。 メリットとしては、大きく二点。 ① 複数のデータ層を横断した、人間に不可能な複雑なデータ分析が可能となる ② 痛みを伴う、嫌われがちな政治的に困難な意思決定が可能になる (意思決定の「脱属人化」(De-individualization of leadership) これら(特に①)は、「プラットフォームの経済学」が主張するAI意思決定の推進理由とも合っています。 一方で、デメリットとしてこれらに対応して大きく二点が提示されています。 1.機械が下した判断に盲目的に従わせることは、組織の動機づけを損なう 2.100%機会任せにする場面を想定すると、「意思決定のパラドックス」がある 1は、例えば企業で流行のHR Techを考えると分かりやすいでしょう。 人材採用でAIが採用を決定する方が採用業務の生産性は高まる。でもだ...