スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

4月 22, 2018の投稿を表示しています

経営学が直面する4つの変化(2)

AIやデータサイエンスの台頭は、経営学にどういう影響を及ぼすか?4つの変化について、前回の続き、2つめの変化からです。 2.研究✕手法 デジタル化はコンテンツ(論文の中身)だけでなく、 研究手法そのものに大きな影響を与える かもしれません。これは、今回AOM Big Dataで得た一つの気付きでした。日本ではそういう議論は全然盛り上がっていないと思いますが。 一つには、 深層学習等を使って書かれた論文は、普通に登場している 。 例えば、AOM Big Dataのある論文は、モダンアートの創造性と社会的成功の法則性を研究するため、分析に作品の画像解析(顔認識)を使っていました。具体的には、多くの作品を機械に読み込ませ、特徴量(例えば人物の目と鼻等の相対位置)を抽出させる。それにより個々の作品の特徴量が平均的作品とどの程度乖離しているかを独立変数(創造性)に。従属変数はテキストマイニングで抽出したメディアでの作品の言及量(社会的成功)を取る。そして作品ごとに「創造性」と「社会的成功」の相関を統計分析する、という感じでした。本論文が未公表なので詳細は不明な面もありますが、少なくとも「人間だけでは出来ない分析」は行われている模様。 また別の発表論文は、ある経済概念(例として、サステイナブルエナジー)の社会的認識が、国の制度的文脈によりどう異なるかを検証。それに、自動化(ある国のウェブ上でのその概念の言及をビッグデータ化しテキストマイニング)と解析モデル(Python)でそれを視覚化していました。これは、従来であれば研究者が文献を肉眼で追い、コーディングし、コードを集計し、コーディングを解釈し、文章で書いて説明していたものです。こうした定性研究が一般的だった内容(制度ロジックのディスコース分析)を、定量的技術で処理している点も印象的でした。データのクリーニングが大変だったようですが、 ①分析を半自動化し、かつ ②人間だけでは出しにくいアウトプットを出す (視覚化のX軸とY軸はテキスト相互の近似性をテキスト集計した結果になっており、計算作業が膨大で人間では現実的に難しい) という点で、一つ目の論文と共通項がありました。 ただ、これらは現時点で先進ツールを研究に使う限界を示しているともいえます。 まず、機械がやるのはあくまで分析パートの一部で、分析...

経営学が直面する4つの変化(1)

経営学がAIを含むデジタル化の影響で変わるとしたら、何が変わるのか?今回AOM Big Data Conferenceで、全体像を考える手掛かりが得られた感じがします。経営学と社会の接点である「研究」と「教育」に、影響する対象として「コンテンツ」(内容)か「手法」か、の2×2の掛け算で見ると分かりやすいと思います。変化はその4つの面で顕在化しつつあるのではないでしょうか。以下、仮説を書いてみたいと思います。 1.研究×コンテンツ 経営学の研究対象である経営や企業社会でデジタル化が浸透するため、結果的に論文など研究の内容がよりデジタル化を扱うことになる。具体的には、3つ位のパターンがあるでしょうか。 第一に、「デジタル化」や「デジタル化による理論の変化」には特に興味が無い場合。興味が無いとしても、例えばある理論的検討余地について企業の事例研究を行うとき、過去に同じように事例研究をした場合に比べ、企業行動がデジタル化という環境変化のせいで特有の変化をしている可能性があります。なので、構築したい理論的検討余地にとって、デジタル化という文脈がどういう影響を持つか、以前よりも注意して議論する必要があるでしょう。 第二に、デジタル化による環境変化が、新しい理論的検討余地を生み、それに理論的な興味がある場合です。例えばAI実装が進み業務が自動化されれば、組織内外での知識の共有のされ方が変わり、それは伝統的な知識理論とはギャップがあるかも知れない。人的資源管理の伝統的な理論では、HRテックの浸透した組織をうまく説明できないかも知れない。このパターンが、見た範囲ではBig Data Conferenceの発表論文でも多かったと思います(私自身もそうです)。トピックとして「デジタル化」を使いつつ、理論としては既存理論に基づきその拡張・更新を狙う感じでしょうか。 そして第三に、デジタル化や技術のあり方それ自体に理論としての興味がある場合。従来、そういう議論がいわゆるIT系の論文・学会で行われてきたと理解します。今回のカンファレンスは、他分野(組織論、人的資源管理論、戦略論など)の研究者を招いて、他理論の視点でそれを語ろうという色がありました。なのでこのパターンの論文は少なかったように感じます。またこのアプローチでは、トピック自体から理論にジャンプしやすい陥穽もあるかもし...

法学者のAI論を経営学(社会学寄り)の耳で聞く

第 32 回 AI 社会論研究会 が、昨日本郷三丁目にあるドワンゴ社で開催されました。これは、慶應義塾大学 SFC研究所 の AI 社会共創・ラボが関与し、 AI に関する様々な識者スピーカーを呼んで講演と対話を行う月次定例会です。特徴は、 HELPS ( H: 哲学、 E: 経済学、 L: 法学、 P: 政治、 S: 社会、(+もちろん技術))という領域横断で検討する、ゲストスピーカーの多様性です。これを聞けば「明日からビジネスに使える」という即効性はないですが、「 AI を考えるには社会的視点が重要だ」とよく言われる際に、「社会的」とはどういうことかについては、アンテナが広がる会だと思います。 今回は、法学の観点で、お二人のスピーカー。最初は、中央大学総合政策学部の平野教授によるロボット法についての話でした。平野教授は「ロボット法」という書籍を昨年出版されています。 http://www.koubundou.co.jp/book/b324653.html ロボット法というのは便宜的な名で、 AI 等の技術革新に伴う新たな法律問題に対して、どう対応していくかの枠組みを考える試みのようです。いくつか、講演のポイント(細かい点は割愛し、興味を持った部分)と経営学から見た雑感を書いてみたいと思います。 ・ AI 時代の「予防的対応」の重要性 ポイント: AI が社会に浸透して新しい問題が出てから対応を考えるのでは、法律の場合、遅い。むしろ、予防的対応をどこまで出来るかが重要(医療で予防が治療と同じか以上に大切なのと同じ)。だからこそ重要な論点について国民的議論を喚起しようとしている。 感想:法学などと比べて 経営学では、破壊的技術への予防的対応の議論がそれほど無い 気がします。一応、先日の AOM Big Data Conference などは、そうした予防論の始まりかもしれません。ただ、全体ではそこに熱意がある状態とはほど遠い感じがします。 Big Data カンファレンス内でも、社会的視点は経営研究者によりバラツキがあると感じました。「事例がもっと出てきたら、後で(伝統的な方法で)何か研究しよう」という引いたスタンスの人もまた多数。またそもそもそういうテーマのカンファレンスに来た人自体が、 AOM 全体では少数派です。経営学の...