監視資本主義の議論では、著者以外の研究者にも波紋が広がっています。今日は、Organizaton Theory誌で書かれたエッセイ3本のうちの一本を要約します。これは、Audit societyという社会像の提唱で、25年位から一世を風靡したマイケル・パワーによるものです。 Power, M. (2022). Theorizing the economy of traces: From audit society to surveillance capitalism. Organization Theory. 1-19. 要するにこの論文は : 近刊「監視資本主義」で知られるS. Zuboffの指摘に対して、90年代から注目されてきた「オーディットソサエティー(監視社会)」論からその示唆を議論したエッセイ。 ポイント : ショシャナ・ズボフは、2019年の「監視資本主義」で、近年の技術進化がもたらす社会変化について次のように警鐘を鳴らした: あらゆるもののデータ化とデジタル技術の浸透は、資本主義の本質を変えつつある。特に政府やGAFAMをはじめとする巨大企業があらゆる社会活動からのデータを握り、人間はその監視の中で支配される存在となりかねない。 企業では、20世紀初頭にフレデリック・テーラーが生産現場に科学的マネジメントを取り入れた際に夢見た、経営による従業員の完全なる統制が実現する。 政府はデータの掌握によって万能となり、社会秩序はデータに駆動されて形成される。 これに対して、本エッセイの著者はオーディットソサエティー(監視社会)という概念を1990年代から提唱してきた。ズボフの議論は、監視社会論に、3つの変曲点をつきつける。 第一の変曲点は、「プラットフォーム化(platformization)」である。 これは、オンラインプラットフォームの普及により、組織がプラットフォームを介して自動的に形成される変化が加速していることを指す。 この結果、「監視社会」論で問題とされた、外部への説明責任の要請に過剰反応し歪む組織という構図が、もはや重要でなくなる。なぜなら、組織をアルゴリズムが作って自動運営するため、説明責任はデータやそれを扱うプラットフォームの問題になっていくためである。 言い換えると、「監査社会」論で問題となった「監査と会計が人間の組織を支配する」という世界...
人工知能などの革新的技術が、経営学をどう変えるかを考えるブログ。 組織論や戦略論はどう変化しているか? 研究手法にAIはどこまで浸透するか? など。