アメリカ経営学会に行って感じた雑感です。AI関連の研究セッションのトレンドについて、この5-6年観察していますが、また段階が変化してきているように感じます。
当初(2017-19年頃)は、AIを研究することで新しい研究が広がる!という呼びかけが主体でした。まだ論文が出ておらず、主要誌もそのようなトピックを取り上げない状況。前例がないので、どう発信していくかを多くが様子見していました。セッション数は割と多かったのですが、誰も論文を持っていないので、抽象的な興味を話し合うようなPDWが多かったと思います。
やがて、2019年頃からエスノグラフィーを中心として学会で事例報告を含むPDWや論文報告がポツポツ出てくるようになります。それらは20年代にトップジャーナルなどにも掲載されるようになります。大御所が参加しているものもありますが、どちらかというとそうした大御所の弟子の若手(主にアメリカのトップ校PhD)が、出世作としてそうした論文を出していった印象があります。この頃には、ある程度事例が蓄積していくつかの知見が「常識」化するようになります。そこで、研究としてはそれらを統合した理論的示唆が求められるようになります。
2023年時点では、そうしてトップジャーナルに出た何人かがAI系の「著名若手研究者」となり、集まってPDWをやったりしていました。理論的論文も各分野で出始めていて、まだ体系的な理論という感じではありませんが、有力者の顔ぶれと研究すべき課題の方向性はだいぶ整理されてきています。逆に言うと、当初の何でもありなカオス感覚は薄れ、少しこの分野も制度化が始まった感じです。一方で、ChatGPTなどLLMの登場で状況が大きく変化している(しかしLLMの経営学研究はまだ無い)ため、現在は踊り場にあるのかも知れません。
今後の変化として考えられるのは、3点。
第一に、LLMの事例研究がすぐ出てくると思われます。そしてそれが、これまで数年で少し蓄積された非LLMを前提とした経営学の理論的試行を無力化する可能性もあります。
第二に、そうなると、今後も続く技術革新に対して、いちいち過剰反応して新しい理論体系を主張していくわけにはいかないだろう、という冷めた反応が出てくるかも知れません。今回のAIブーム当初も、もともとトップジャーナルは批判的で遅い反応だったわけです。それに対して「今回はそうした『この波は特別』と言っても良さそうだ」という合意が世間より3-4年くらい遅れて形成されていったのですが、今年辺りからまた冷静な反応を良しとする常識感に戻るかも知れないと感じます。AOMのセッションも、アルゴリズムを題材にしたものは多くありそこは変わっていないのですが、少し熱量や落ち着き感が変わった印象もありました。
第三に、研究手法にアルゴリズムが浸透するのは避けられないので、そこが発展していくことは確実です。この点は、集客にも顕著で、アルゴリズム手法系のPDWは今回AOMで非常に聴衆が多く混雑していました。
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