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デジタル時代の企業間関係

デジタル時代には、企業は組織の枠を超えて、時にはデータや分析を共有しつつ、新しい知識を得ていく必要があります。特に、データと分析を通じて付加価値を高め、分析に基づいてアフターサービス等を提供するサービスモデルへの転換は、メーカーにとって重要です。しかし、企業同士が手を組んでも、その関係は必ずしも協力だけではなく、競争的になることも多くあります。今回の論文はそのような関係性に関する実証研究です。

Cepa, K. (2021).Understanding interorganizational big data technologies: How technology adoption motivations and technology design shape collaborative dynamics. Journal of Management Studies, 58(7), 1761-1799.

要するにこの論文は:

ビッグデータとデジタル技術の台頭が、イノベーション実現に向けた組織間関係にもたらす影響の法則性を、13の事例から検証した事例研究。

ポイント:

  • ビッグデータとデジタル技術の台頭は、二つの側面から組織間の協力と相互学習を促し得る:
    • デジタル化はデータの透明性を高め、データ処理能力を高める。これは、組織の学習能力を高める。
    • さらに組織は互いに異なる補完性あるデータと知識を持ち寄ることで、新たな知識獲得が可能になる。
  • しかし、学習競争理論の観点では、組織間で学べる程度に格差がある場合、組織間関係は競争的になり、安定しないとされている。
  • では、実際に企業組織はビッグデータの普及とデジタル化の中で、どのような組織間関係を構築し、どのような結果を得ているのか。
  • 本研究は、こうした理論の錯綜を整理するため、北欧での13の事例研究(予測に基づく機器メンテナンスとコンサルティングサービスに関する、企業間関係への参加企業のシニアの視点から)を行い、以下の知見を得た:
    • 企業間関係は、そこに参加する企業の動機付けと、ビッグデータ技術のデザインによって、4つの経路のいずれかをたどる:
    • ①特化したパートナーシップ:
      • 各企業が互いを補完する動機付けで参加する場合(例:メーカーは学習のため、顧客企業はコスト削減のため)、技術のデザインに関係なく双方は協力的に進める
    • ②学習競争の回避:
      • 各企業がいずれも学習を動機付けに参加し(例:メーカーも顧客企業もサービスを通じたデータ分析を自らの競争力の源泉に結びつけようとする)、データの透明性やデータ分析力を両者が共有する場合、企業は協力的な関係となる
    • ③擬似的な学習競争:
      • 各企業がいずれも学習を動機付けに参加し、両者のデータ分析インフラは共有だがデータの入手が個別で一方が他方より有利な場合、企業は互いに不信感を持ちやや競争的な関係となる
    • ④本格的な学習競争:
      • 各企業がいずれも学習を動機付けに参加し、データ分析インフラもデータ入手も個々の企業が別々に持ち不平等がある場合、企業は本格的な競争的な関係となる

コメント:

この研究は、組織間関係をメインテーマに、どのような条件であれば企業間のイノベーションの取り組みで協力的な関係が続くのかを検討しています。現実に対して、非常に示唆深いものがあると思います。

昨今、特にAIに関連して企業間のコンソーシアムや、新しいタイプの顧客との協働学習関係が非常に多く生まれています。これらは強い拘束力の無い関係で、不確実な状況で自社だけでは出来ないイノベーションを目指すには、都合の良い形態です。組織間関係論は、近接した理論領域(あるいは似たような名前の別の理論)が多く、あまり進展していない印象ですが、AI時代に広がる企業の枠を超えた組織化現象を捉える上で、一つの重要なカギとなると思います。

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