Organization Science誌の特集号論文がこのところ続いたので、今回は少し毛色を変えます。2020年という少し早い段階に出た、昔からの議論を継承したAI論です。
Kellogg, K., Valentine, M. and Christine, A. (2020) ‘Algorithms at work: The new contested terrain of control’, Academy of Management Annals, 14/1: 366-410.
要するにこの論文は:
技術革新が資本家による労働者の搾取を促すという伝統的な議論を念頭に、AI導入が労働者の管理に及ぼす影響を整理した理論論文。
ポイント:
- アルゴリズムは6つのメカニズム(6R)を通じて業務を統制する。6つとは、Restricting, Recommending, Recording, Rating, Replacing, Rewardingである。
- さらに、アルゴリズムは以下の影響をもたらす:
- アルゴリズムは、その性能を通じて高い経済的成果を生む
- しかし、アルゴリズムは従来にない包括的な労働者管理(常時・個別化・相互的・ステルス化されたモニタリングと賞罰)を可能とするため、労働者にとっては一挙一投足が監視される強力な管理の世界が生まれる
- 労働者にとって、アルゴリズムの利用が進むことは、AIを駆使する新たな職業を生み、高度な職業にステップアップする機会を持てる側面もある
- 一方で労働者は、「アルゴアクティビズム」とも呼べる新たな方法(規制・世論喚起・データ所有権などの活動)を駆使し、アルゴリズムによる強力な管理に対して抵抗する
コメント:
前提として、この論文は
- マルクス主義的史観における資本家と労働者の対立
- 労働者に対する構造的な搾取促進のツールとしての技術革新
特に面白いのは、AIが労働者にとっても資本家にとってもそれぞれ武器として使われることを想定している点です。資本家であれば、ホワイトカラーの労働監視や合理化にAIは簡単に転用できる。一方で、労働者も、デジタルスキルを磨き強力なフリーランサーとなることで有利な立場を手に入れ、また分析ツールをやSNSを使いこなし世論を味方につけることができる。この新しい技術の使い方次第で、パワーバランスが決まってくる点は、古い議論に新しい血肉を与えており、その点は価値があると思います。
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