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AI時代の組織はどう学習するのか?

AIに関わる経営学論文、2本目です。今日の論文は、組織学習に関するものです。

今日の論文:

Balasubramanian, N., Ye, Y. and Xu, M. (Forthcoming) ‘Substituting Human Decision-Making with Machine Learning: Implications for Organizational Learning’, Academy of Management Review.


要するにこの論文は:

  • AIの学習と人間の学習がどう違い、その結果AIが浸透すると組織学習がどう変化するかを理論化した。

ポイント:

  • 人間の学習・AIの学習にはそれぞれ長短がある。
    • 人間の学習は、社会的な文脈を想像で補完することに強く、状況に応じて拡張性があり、予想外の事態に対して修正がききやすい。
    • AIの学習は、条件がそろえば人間を超える高い正答率を出すが、3つの弱点がある。弱点とは、①データに含まれるバイアスが増大してしまう、②過学習により歪んだ正解を出すことがある、③計算過程がブラックボックスなため説明が必要なプロセスには使えない、ことである。
  • 組織として考えると、人間の意思決定をAIで代替していくことで、短期的には最適化が進む。その理由として、AI導入後に組織内で2つの変化が進むことがある。
    • 変化①:AIを導入していくと、組織内の業務は画一化していく。これは、AI導入にはデータの形式・処理方法の統一化が不可欠なため。そうすると、人為的なミスや、定式に合わない属人的・非効率な作業方法が駆逐されていく。
    • 変化②:AIを導入していくと、業務の裏で話し合われてきた背景知識は次第に省略される。無駄な情報で煩わされることがなくなる一方、必要とされる以外の余分な情報を知る人は減っていく。
  • 結果として、AIによる人間の代替を進めていくと、組織には次のようなリスクがある。
    • リスク①:長期的なトレンドや長期的な結果を軽視してしまう。
    • リスク②:組織・人間の間の複雑な相互関係を軽視してしまう。
    • リスク③:極端なシナリオを排除してしまう。

コメント:

組織学習の観点で、AI導入が何をもたらすかを論じた、先駆的な理論論文です。組織は常に学習していくものであり、組織学習の質は成果に直結するとされています。しかし、AIによる人間の代替を進めていくと、組織学習の質が悪い方向にも変わり得ることが論じられています。

示唆としては、「AI導入を進める際は、組織学習上の弱点を補う運用が重要となる」、ということです。AI導入では、業務領域ごとに、どこまで機械化するか(しないか)を判断する、ある種のマッピングと仕分けが必要になります。その際に、データの有無やコストインパクトなどの目先の話も重要ですが、長期的な弊害も考える必要があると警告する点が、この論文のバリューでしょう。

この論文では、特に注意が必要なのが、長期性・相互関係・極端シナリオという三要素の軽視だとしています。確かにそうかなとも思えますが、これはAIに限らず、RPAやリモートワークでも登場し得る論点のように思います。また、「AIを導入すると極端なシナリオへの対処が盲点となる」と言いますが、別の論文では逆の示唆を出したシミュレーションもあります。他の理論にも言えますが、この分野は実証研究がまだ少なすぎるため、理論の内容が現実的かどうかの判断が難しい(理論を作る方も内容を考えるヒントが少ない)のだと思います。

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