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アルゴリズムがもたらす4つの組織変化

アルゴリズムの台頭は組織をどう変えるのか?
この直球のテーマを扱った、経営学論文の要旨をここでは紹介します。

Faraja, S., Pachidib, S., & Sayeg, K. 2018. Working and organizing in the age of the learning algorithm. Information and Organization, 28: 62-70.
(あくまで実証データの無い理論ペーパーで、また参照文献も一般メディア記事が多いため、どちらかというと「高級なビジネス評論」という感もありますが)

――――――(以下、要旨)―――――――
学習アルゴリズムの台頭は経済発展に貢献するとされる。しかし、社会が受ける影響には楽観悲観の両論が混在する。

アルゴリズムが持つ4つの特性が、社会への影響を形作る。

第一に、アルゴリズムが持つブラックボックス性。
アルゴリズムの高度化に従い、「なぜその結論に至るのか」が人間には説明不能になる。

第二に、デジタル化の統合連動性。
一つのデータソースだけでなく、複数の情報源を組み合わせて機械が学習することで、予測の精度が飛躍的に高まる。例えばアマゾンがフェイスブック並みの情報を持てば、推薦する本の精度がさらに高まる。

第三に、定量化が持つ神話性。
あらゆるものが数値化されることで、客観性が高まったと認識されやすい。あらゆるものを明確に定義された基準で判断する傾向が強まる。

第四に、隠された政治性。
例えば人種など、個人の属性とそれが統計的に紐付く結果を結びつけて分析すれば、意図しなくてもそこに政治的な意味が生まれてしまう。

では、それが組織にどのような影響をもたらすか?

アルゴリズムは、これまでの技術革新とは質的に異なる変化をもたらす。ただし当面は、表面的には、過去の技術革新とあまり変わらない。自動化される業務範囲が広がり、生産性が高まり、ある職種の需要が増えたり減ったりし、いくつか新しい職業が生まれるだけである。

しかし、4つの特性が混ざり合って、組織と職業はそれを越えた変化にさらされる。特に、4つの組織変化が重要である。

第一に、「専門性」の意味が変わる。
人が判断に必要な暗黙知を獲得する過程がアルゴリズムで代替されることで、人が担うと期待される判断的業務もやがて脅威にさらされる。長期的には、機械が判断に必要な知識獲得の機会を代替してしまうことで、人間の専門家が育たず人間の専門的能力が衰え機械依存になる可能性がある。

第二に、職業の存在意義と境界線が変わる。
まず、アルゴリズムは、単に仕事を代替するだけでなく、職業責任の意味を変える。アルゴリズムが誤判断をした際の責任の所在が喫緊の問題となる。
さらに、アルゴリズムの台頭で多くの職業が価値の再定義を求められる。消滅せずに生き残る職業も、高度な情報を活用してより付加価値の高い業務に集中するよう自らを再定義し、その過程で職業のアイデンティティが変化する。例えば図書館司書は、検索ツールが高度化し誰でも使えるようになるに従って、単なる「蔵書検索の専門家」ではなく「情報とそれを求めるユーザーのつなぎ手」として自らの意義と業務内容を再定義していった。このような自己再定義と職業の境界線の移動は、あらゆる職業で起こる。

第三に、アルゴリズムは新しい組織の管理ツールを提供する。
例えばUberのドライバーは、アルゴリズム上の評価で管理され、それを高めるために忙殺される。現代のジャーナリストは、自分の記事がソーシャルな拡散の度合いに応じて評価されるため、検索や共有のアルゴリズムを意識しそれに沿って仕事をせざるを得ない。
働き手はそうしたアルゴリズムの支配から逃れるため、対抗戦略をとる。例えば、評価を金で買ったり、プラットフォームへの参加を選択的に取りやめたり、自らに有利な文化や政治的トレンドを作り出す。このように、機械と協働しつつ、機械による支配からどのように脱するか、従来にない試行錯誤があらゆる職業で生まれる。

第四に、コラボレーションを強化し新しい形態の組織を生む。
人を固定的に雇い組織のメンバーにする代わりに、タスクと外部の働き手をアルゴリズムがマッチングする、仕事のオンラインプラットフォームが急成長している。さらに、Slackのようにコミュニケーションツールにおいて、ユーザーがどこに注意を置くかをアルゴリズムが解析し、メッセージの位置やハイライトを変えることで協働に影響を与えデザインすることも始まっている。これらは、アルゴリズムが雇用と長期関係を重視する「組織」の概念を変え、また個人間の協働の質もコントロールする未来を示す。

こうしたアルゴリズムの影響を考えることは、組織論の最も基本的な前提を見直すことにつながる。
―――――――――――

4つの変化の視点は妥当性が高いと思います。特に第1(専門性の代替)と第2の変化(職業再定義)は、既に顕在化しつつあります。但し、技術・コスト的な問題でアルゴリズムの浸透度がまだ低いため、今は真剣な議論は一部の専門職などに限定されていますが。

第3(組織管理と対抗)・第4(コラボレーション)は、フリーランス的働き方が前提となる部分があり、日本では主流派にはまだ少し遠い議論かと思います。ただし、働き方改革と連動した、兼業副業の推奨・浸透が進んでいけば(そしてその長所を個人が実感していけば)、こうした流動的な組織が普通になる変化が一気に加速すると見ています。

大きく言えば、アルゴリズムとの共生はミクロとマクロのレベルで起こる。つまり:

①個々のタスクについて、アルゴリズム(と非AIのデータ分析)を適用できるルーチンを探して自動化しつつ、判断的タスクをどう人と機械の協働で高度化するか

②組織と働き方について、その瞬間ごとにニーズある仕事とできる・やりたい人材をマッチングしつつ、可視化された評価をめぐる公平性・社会正義をどう担保するか

人工知能の台頭が組織に及ぼす変化の当面の論点は、ざっくりこの二要素が主となるのではないかと思います。あえて言えば、

③そうした変化をいかにストレスなく実現するか

というチェンジマネジメントの観点も底流の論点かもしれませんが。

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