オンラインプラットフォームで仕事をするフリーランサーとしての働き方は、海外だけでなく日本でも増えてきています。今日の論文は、そうしたプラットフォームがAIを使っていることからAI系の組織論でよく出てくる、ギグエコノミーに関する最新のものです。
Bellesia, F., Mattarelli, E., & Bertolotti, F. (Forthcoming). Algorithms and their affordances: How crowdworkers manage algorithmic scores in online labour markets. Journal of Management Studies.
要するにこの論文は:
ギグエコノミープラットフォーム上で、オンラインで仕事を請け負うフリーランスがアルゴリズムによる評価にどう対処するかを検討した事例研究論文。
ポイント:
- オンラインプラットフォーム上で仕事を請け負うギグワーカーは増加を続け、プラットフォームは新たな雇用の場として影響力を増している。
- プラットフォーム上では、仕事の評価はプラットフォームのルールとアルゴリズムによって行われる。そのため、ギグワーカーは必ずしも透明ではないアルゴリズムの評価に大きく影響される。
- このようなアルゴリズムの影響は、ギグワーカーの行動を制約するのか、あるいはギグワーカーはむしろこのような環境を活用して自由に活動できるのか。
- 本研究では、プラットフォーム上のアルゴリズムによる仕事のスコアがギグワーカーにどう認識され、彼らは感情・行動面でどう対処するのかを探索した。
- 有力プラットフォーム上で活動するギグワーカーに対して、2017-19年に66件のインタビューを行い構成主義的なグラウンデッドセオリーの手法で分析した
- 結果として、以下が明らかになった:
- プラットフォーム参加初期には、ギグワーカーはまだ自分の評価が十分に確立していないため、まず自身の評判・スコアを確立することを目指す
- 認識面ではアルゴリズム評価を制約条件とみなす
- 行動面ではアルゴリズムに従って、その枠内で小さく試す
- 感情面では失敗に対する恐れが支配的となる
- ある程度評価が確立してくると、ギグワーカーは次の内いずれかの方向性に対応を変化させる:
- 機械的なスコアマネジメント:アルゴリズムのスコアを自分のための宣伝材料とみなし、アルゴリズムの中で評価が高くなるよう契約を小分けにするなど様々な操作を行い、感情的には無感情に近い
- 感情的なスコアマネジメント:アルゴリズムのスコアを自身のアイデンティティとみなして重視し、それが高くなるように依頼主を厳選し継続的な関係を築くようにし、感情的にはスコアが悪くならないか気になってストレスと不安にさいなまれる
- 受動的なスコアマネジメント:アルゴリズムのスコアを所与のものとみなし、行動面ではよい仕事を提供することに集中し、しかし必ずしも依頼主は十分な高い評価を与えず無理な要求をされるなどで、感情面ではフラストレーションを抱える
コメント:
これはギグエコノミープラットフォーム系の研究で、珍しいインタビュー中心の研究です。これまで公刊されたギグエコノミーの論文は、参与観察、またはプラットフォーム上のやり取りをテキストデータとして解析するものが比較的多いので、手法的に少しレアな感があります。
内容はなるほどと思わせる非常に面白い点があると思います。一方で、サンプルが少数かつサンプリングロジックがやや曖昧なので、世界の中のどういう一部分を切り取って深掘っているのかが、少し分かりにくい気もします。また、感情の計測をインタビューコメントの主観的解釈で行う点は、信頼性が大丈夫なのか、査読者によって判断が分かれ得ると思います。総じて言うと、こうした仮説的理解を統計的に検証する研究と組み合わせてくれれば最高なのですが、そこまでを一本の論文に求めるのは難しいと言う感じかと思います。
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