革新的な技術が登場すると、期待が集まる一方、大したものではないのではないかという批判的な視点も集まります。今回は、このような新技術への評価と、そのような技術・企業への投資や業績との関係を検証した論文です。
Converging tides lift all boats: Consensus in evaluation criteria boosts investments in firms in nascent technology sectors. (Forthcoming). Shen, X., Li, H, Tolbert, P. S. Organization Science.
要するにこの論文は:
新技術の評価基準に対するコンセンサスが、新技術への投資に与える影響を検証した、実験と文献データを使用した定量実証研究。
ポイント:
- 新技術が生まれた際に、その技術を評価する基準が広まるに従って、その技術を活用した業界の好業績企業の生存率が高まることがこれまで提唱されてきた。
- しかし、この理論は正確ではない。本研究は、実験と文献データを通じて、この理解が人工知能などの文脈で正確でないことを検証した。具体的には、次の二点が正しい理解である:
- 1.評価基準が広まれば良いのではなく、評価基準の内容に共通理解がありコンセンサスがあるかどうかが重要である
- 2.その影響を受けるのも、一部の好業績企業だけでなく、その業界の全企業である
- その背後には、以下のようなメカニズムがある:
- 技術の評価にコンセンサスがあることが、投資家に不確実性の低さを意識させ投資を活性化させる。
- 評価にコンセンサスがあると、投資家はその技術を担う企業であれば、現在の業績に関係なく有望であるとみなしやすく、また他の投資家も同様に高く評価すると期待するため、トップ企業以外にも投資しやすくなる
- このように、個々の評価の集積が積もり積もって新技術やその業界への評価、さらには投資や業績に連動するという発見は、制度論的視点での、技術や新業界の形成を具体的に現す特徴である。
コメント:
制度論の大家を著者に含めた、実験・実証的な制度論の視点とAIなど新技術の論点を融合させた論文です。あくまで実験等なので、外的妥当性(中国の投資家などが対象だが、それがどこまで他にあてはまるのか)が気になりますが、論文・研究のデザインが非常に巧みだと思います。制度論のような古く大きな理論と、昨今のデジタル化・技術革新をうまく融合させる上で、まさにその古い研究の大家を共著者にするというアプローチも、参考になります。
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