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AIを理論構築・仮説検証でどう使うか

経営学の学術研究をAIがどう変えていくのか?

例えば、経営理論やその検証をAIが自動化することはあるのか?

ここでは、前回のエントリーで示した総論(デルファイ法による専門家の想像)に対して、実際に今AIを使って提唱される研究手法の論文を紹介します。

Shrestha, Y. R., He, V. F., Puranam, P., & von Krogh, G. (2021). Algorithm supported induction for building theory: How can we use prediction models to theorize? Organization Science, 32(3): 856-880.

ポイント:

  • 社会科学の多くの分野で、機械学習アルゴリズムを使った新しい研究手法が急速に浸透している。伝統的な仮説検証型の研究も、その例外ではない。
  • アルゴリズムを効果的に使うことで、定量研究の中核である仮説検証型の研究の質を高めることが出来る。具体的には、次のような4つのステップが推奨される(詳細はごく簡略にして記載)
1. サンプルの分割

  • ランダムに定量データを2つに分ける(サンプル1とサンプル2)

 2. 頑健かつ人間に理解できる変数とパターンの抽出

  • サンプル1に対し、機械学習モデルを使って重要な変数を抽出する
  • 重要変数間の関係性を抽出する(複雑性の程度を決め、また過適応への調整を行う)

3.理論(検証すべき仮説)を構築する

  • (変数の意味と紐付けて人間が意味があると思う仮説にする必要があるため、通常の仮説検証と同様に人間が行う)

4.仮説検証

  • サンプル2で仮説を統計検証する(方法は通常の仮説検証と同様)

  • AIが真価を発揮するのは理論形成(仮説構築)の部分であり、アルゴリズム支援による理論抽出は人間が形成するよりも妥当性の高い変数(例えば説明変数候補)を抽出する。これは、アルゴリズムで検証する方が、人間が行うよりも過適応(オーバーフィッティング)の問題を厳密に取り除くことができるためである。
  • このような、AIの浸透は人間をただちに置き換えるものではない。しかし、一流の研究者が行うのと同じ配慮を、より厳密な方法で行う点で研究者に大きな発展性をもたらす。
  • この方法を使って各研究者が研究を進めていくと、従来は人間がおおざっぱに解釈・検証して大きな射程であてはまるとされてきた大理論が、実際には細かいセグメント毎にバラバラのもっと細かい仮説のパッチワークのようになる可能性がある。しかしそれはそれで、好ましい変化である。

コメント:

AIが経営学研究に使われる非常に具体的な方法を、例つきで解説した非常に重要な論文です。前エントリーで解説したAMPの論考では、短期的にはこのような理論構築に関する貢献は強調されておらず、データ収集や処理が主眼とされていました。しかし、具体的にこのような提案があることで、実際にはより人間の判断と創造性の中核的な、理論構築(と仮説検証)そのものにも、AIがかなり入り込める可能性が浮かび上がっています。

これは、他の専門職と同様に、学術研究者の判断を伴う業務がAIによって代替されて(もしくは変質して)いく過程にあることを示していると思います。この「中核判断部分へのAI浸透」は他の専門職でもかなり観察されています。例えば、公認会計士(監査)での、不正検知の中核となる仕訳テストにおける機械学習モデルの使用。あるいは、弁護士の法廷戦略構築を、過去の判例と法廷戦略の解析から決定する。いずれも、専門職が完全に代替されるのではなく「AIによる提案型」になっているのが現状で、人間では気付けない異常値や傾向を(使えないものも含めて)即時に提示する、という形です。この学術研究の定量研究での変数と変数間関係の候補の抽出というのも、極めてそれに近いと理解します。

真の自動化に向かうには、結局の所この論文のステップで言う3の部分が機械に任せられるか、にかかっています。この部分は、アルゴリズムの性能(今はまだそこまで出来ないがいずれ出来るようになる可能性が高い)と人間社会の倫理(そのような処理を機械任せにして問題が起こったときに責任が取れるか・受け入れられるか)の両側面から、未来が決まっていくものだと思います。


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