前回に続き、トップジャーナルのデジタル特集号の記事です。
Karunakaran, A., Orlikowski, W. J., & Scott, S. V. (2022). Crowd-based accountability: Examining how social media commentary reconfigures organizational accountability. Organization Science, 33(1): 170-193.
要するにこの論文は:
インターネット上の口コミの評判に対する、企業組織の反応のあり方を検討した実証研究論文。
ポイント:
- 様々なステークホルダーの要求に対して、組織は可能な範囲で要求に従うことでその不満を抑えることができる。そのため一般に、収斂的対応(特定の問題に関する要求に合わせて自社のやり方を変え、火消しをする)がかつては重要だった
- しかし、ソーシャルメディアの台頭により、状況は一変した。顔の見えるステークホルダーの意見ではなく、クラウドで無限に匿名コメントがわき上がる。そのため、次のような状況が生まれる:
- 要求が衝動的で、互いに矛盾するものも多く、しかも次々に上書きされていく
- 何が正しいとされるかの基準もはっきりせず、かつ基準自体が流動的で変化していく
- 結果として、現代の組織にとっては、回析的対応(次々に変わる要求に対して、結論無く対峙し続ける)が重要となっている。
- そのような対応は、対応する企業側にとって、そもそも何について説明責任を問われていて、誰に対して、いつ、何に関して責任があるのかを曖昧にさせる。
- 本研究では、これをTwitterとTrip Advisorのプラットフォーム上の事例で実証した。
コメント:
この論文は、「デジタルが組織論についてどのような新しい論点を提示するか?」という特集号の趣旨に合わせ、現代的な現象を理論化しようとした論文になっています。
見方を変えると、現象自体が新しいため先行研究が無く、非常にトピックベースの論文になっているとも言えます。ソーシャルメディア上で起こる現象を、そのようなものがない世界で作られた理論で説明しようとしても、そもそも整合しない。一方で全く新しいソーシャルメディア時代の理論を提唱しようとすると、トップジャーナルとして求められる厳格性の要求に合わない。このような矛盾に対応するために、ギリギリのところでAccountabilityの理論に対する理論的貢献を作る構成になっています。その意味で、特集号らしい論文という印象があります。
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