昨今広がっている、オープンソースコラボレーションのプラットフォームを扱った論文が、今日の論文です。
Lin, Y., & Maruping, L., M. Forthcoming. Open source collaboration in digital entrepreneurship. Organization Science, 1-19.
要するにこの論文は:
デジタルスタートアップ企業が、GitHubのプラットフォームをどう活用して成果につなげるかを検討した実証研究論文。
ポイント:
- デジタル技術をビジネスモデルの核とするスタートアップ企業(デジタルスタートアップ企業)が台頭しており、彼らはオープンソースコラボレーションのプラットフォームを有効に活用し急速な企業成長につなげていると言われる。
- しかし、オープンにノウハウや技術を共有し合うことがイノベーションにつながる一方、何でもオープンに共有してしまえば、機密や事業としての差別化要素まで失われてしまう。
- このような「オープン性のパラドックス」に対して、スタートアップ企業はオープンソースプラットフォームをどう活用し何が結果につながっているか、米国の4,388社のデータを分析し、以下の結果を得た。
- プラットフォームの活用の仕方には、スタートアップ企業の創業からのステージによって違いがある。初期にはインバウンド(タスクを依頼し知識を外から獲得する)が多いが、成長と共にアウトバウンド(依頼されたタスクを受け知識を提供する)が増える。
- そして、これらの違いは企業価値(資金調達時の金額)と相関する。つまり、創業初期にインバウンドを多く活用する企業が企業価値を高めやすく、また創業から成長期に移行していればアウトバウンドを多く活用する企業が企業価値を高めやすい。
コメント:
この論文は、先週紹介した特集号の論文の一つです。まず重要なのが、オンラインプラットフォームでの組織の関係や価値創造を扱っている点です。プラットフォームは、AIやデジタル技術でこそ運用が可能になっているという点で、AI・デジタル系の経営学研究のかなり多くがこれを扱っています。経営情報論・戦略論のプラットフォーム戦略などはその典型で、ずいぶん前から研究が蓄積しています。オンラインプラットフォームは、それ自体が組織化の新しい形態でもあり、組織のあり方を検討する組織論でも注目されやすく研究が蓄積しつつあるトピックになっています。
この論文でもう一つ重要な点は、スタートアップ企業の文脈でオープンソースコラボレーションの成果をデータ検証している点です。プラットフォームをめぐって企業があたかもメタ組織のような相互作用を見せるのは興味深いですが、実務的に重要なのはそれがどう成果につながるか、です。時間軸(創業から三段階)✕プラットフォームの使い方(インバウンド・アウトバウンド)の二軸で、それぞれ結果がどうなっているかを見る視点は、一般的にも分かりやすく優れていると思います。
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