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AIの導入によって、どのような従業員のパフォーマンスが上がるのか?

今日の論文は、トップジャーナルで珍しい、AIがからんだ最新の実証研究です。

 Tang, P. M., et al. Forthcoming. When conscientious employees meet intelligent machines: An integrative approach inspired by complementary theory and role theory. Academy of Management Journal, 1-72.

要するにこの論文は:

機械学習をはじめとするAI利用の普及が、従業員に与える影響を三種の実験で検証した実証研究論文。

ポイント:

  • AI・ロボットの普及によって、20世紀の前提に立つ組織理論のいくつかは修正を余儀なくされる可能性がある。
  • ここでは、その一つとして「実直で秩序立てて働くことが得意な従業員こそが、組織で最も高い成果を上げる」とする古典的理論を検証した。
  • 具体的には、以下三種の実験を行った:
    • 実験1:マレーシアのIT企業で、AIと協働して顧客企業の従業員のコンプライアンスを監視する従業員と同僚に対して、一定期間アンケートを行った。
    • 実験2:台湾のホテルで、サービス提供にロボットを使う場合と使わない場合とを両方スタッフに体験させ(3日間)、その後アンケートを取った。
    • 実験3:米国の多様な業界で働くホワイトカラーのフルタイム従業員に、オンライン上で仮想のビジネスコンサルティングにアルゴリズムを使ってもらう実験を行い、アンケートを取った。
  • 以下の結果を得た:
    • 実験1:AIを仕事で使う場合、実直でシステマチックな従業員の方が、そうでない従業員よりも、自分の役割の曖昧さを強く感じたと回答した。そして役割の曖昧さを強く感じるほど、周囲による仕事の評価(成果)が低かった。
    • 実験2:ロボットを使った場合に、実直でシステマチックではないスタッフの方が、自分の有能性への評価が高まり、自分の役割がより曖昧になったと感じる度合いが低かった。この役割が曖昧だとする認識は、評価(成果)の低さと相関していた。
    • 実験3:(本当は有用ではないが有用であると誤って被験者に知らされた)アルゴリズムを使った場合に、実直でシステマチックな従業員の方が、アルゴリズムを使ったことによる自分の役割の曖昧さを感じる度合いが高く、周囲が評価する評価(成果)が低かった。そうでない従業員は、AIを使うことによる自分の有能性の高まりを高く評価した。
  • 以上から、次のような示唆を得た:
    • AIや先進的技術と協働する場合、これまで評価されてきた「実直で秩序立てて働くことが得意な従業員」は、そうでない従業員よりも心理的にも成果を上げるのにも苦労する可能性がある。
      • これは、従来の技術は人間とちょうど補完し合うレベルだったためうまく協働できていたのが、最新技術では人間と機械とで役割が重複してしまうためである。自分と同じような知的作業が簡単にできてしまう機械を前に、真面目な従業員であればあるほど、では自分は何をすれば良いのか悩み、うまく使いこなすのに苦労する。
      • むしろ、AI導入で成果を高め、心理的にも楽をするのは、これまで評価されないタイプであった従業員(秩序だった作業が苦手なタイプ)である可能性がある。AIを使うことで、苦手としていた秩序だった仕事を、簡単にあるレベルまで引き上げることが出来、その間に本人は仕事のそれ以外の部分で活躍できるかも知れない。
    • AIの有用性を考える際に、このような、「誰にとってのプラスなのか」を考える視点は重要である。

コメント:

この論文は、非常に珍しく(おそらくこれまで唯一)このトップジャーナルがAIを扱ったものです。「AIが従来の組織理論の見直しを必要とさせる可能性がある」という、よくあるAI事大主義なのですが、実際に3つの実験で丹念に検証した希少性が評価されたのかもしれません。

このジャーナルは、この論文の投稿時の少し前までは、たとえ伝統的な理論を正面から扱っていても、「AI」と書いてある投稿について「AIは経営理論ではない」として受取拒否していました。そこでこうした論文が出ると言うことは、時代が変わったこともあるでしょうし、同時に経営学のある種の変わり身の早さを表しているように思います。

内容的には、成果指標がアンケート評価である面など、少し気になる点もありますが、面白い示唆の仮説を抽出していると思います。このような、過去の古典的理論を検証し直すムーブメントが、これから経営学に起こるかも知れません。

ここではトピックだけでAIを使っていますが、以前の記事で書いたように、手法にもAIは入ります。例えば分析自体にアルゴリズムを入れることで、人間では難しい大規模なメタ分析を行い、確立したとされる理論が本当に確立していたと言えるのか、あるいは「AI後」の企業社会でも実際にあてはまるのか、などは面白い領域になっていくと思います。


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