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AIと機械学習は経営理論をどう変えるか?

今日の論文は経営学研究者向けの、AI活用のススメ的な内容です。

Leavitt, K., Schabram, K., Hariharan, P. & Barnes, C. M. 2021. Ghost in the machine: On organizational theory in the age of machine learning. Academy of Management Review, 46: 750-777.

要するにこの論文は:

機械学習をはじめとするAI利用の普及が、経営理論に与える影響を検討したレビュー論文。

ポイント:

  • 前提として、機械学習の3形態は、経営理論の理由付けに用いられる3つの手法と対応している。これは、経営理論と機械学習の相互の役割を理解する土台となる:
    • 教師あり学習:演繹法(仮定と規則から、現象を説明する)
    • 強化学習:仮説的推論法(現象から、仮の規則をあてはめ仮定を抽出する)
    • 教師無し学習:帰納法(仮定と現象から、規則を抽出する)
  • 機械学習と経営理論は、機械学習があれば経営理論が不要になるといった、相反するものではない。むしろ、両者を適切に併用することで、近年の経営理論が抱える課題が解決できる。経営学者はそのシナジーを追求すべきである。
    • 機械学習は、現時点でそれだけでは万能ではない。
    • 一方の経営理論も、細かい専門領域にタコツボ化して全体像や相互の整合性が全く無く、また論文採択を狙って当たり前の無難な小さな飛躍しか言わない、という深刻な課題を抱える。
  • 具体的には、機械学習は経営理論に多数ある、理論として提唱されたが検証されずに放置されている中射程の理論を広くテストし、その適用範囲を自在に調整することに役立つ。
    • 中射程の理論は、個々の組織に完璧にあてはまり実務にすぐ使えるほど具体的ではないが、社会全体にあてはまるほど普遍的で抽象的なものではなく、その中間にある。ある法則性を提示するが、そのあてはまる条件として特定の文脈が設定されているので、実際にそれが正しいか現実に幅広くテストするには大きな時間とコストがかかる。機械学習であれば、モデル化によってこれを一気にテストすることが可能となる。
    • さらに、用いるデータや文脈を変えてモデルを再調整することで、中射程の理論から普遍的な理論として何が抽出出来るかを試す、あるいは局所的にのみあてはまる(実務でも使える)法則性に作り込むことも可能となる。

コメント:

この論文は、一般の組織や経営に対する示唆を出そうという趣旨ではなく、また普遍の真理を探究しようとする趣旨でもなく、経営研究者向けに研究アプローチを呼びかける珍しいタイプのものです。率直に言うと異色の論文でもあり、普通に査読を通ると言うよりは、ジャーナル側にも一定の政策的な意図があってこうした論文が出ているような気もします。

内容的には、特に経営理論が抱える課題についてはまさにその通りだと思います。そしてこれを打破するために、機械学習等の新しい手法を使うことで、理論の検証や修正が低コストで一気に出来る、と言う点は確かにその通りです。

検証やメタ分析だけでなく、例えば大量のテキスト解析など、理論創造を目指す個別事例の分析の段階でも、AIの活用は少しずつ始まっています。ただし分析への活用では、他の専門的タスクへのAI適用と同じ構図で、説明可能性が問題になります。現状では、例えばテキスト解析であれば人間が行った作業内容と判断の基準を、少数の判断事例を具体的に書き他も同じにやったと書くことなどで説明しているのですが、これが「AIがやった結果そうなった」にして良いか、という問題です。AIを論拠にする場合、AIの正確性に対する評価を行いそれを説明するのだと思いますが、現時点では査読者側にそれだけのリテラシーが無く、そこに挑戦するインセンティブがまだ小さい(余計なことをしてリジェクトされるのを避けた方が良いと考えるのが合理的)と思います。

しかし、AIの経営学論文や理論創造への浸透は今後さらに広まっていくはずで、ある種のセグメントの研究では、こうしたスキルやリテラシーが基盤として非常に重要になってくると思われます。


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