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AIとリテール:経営学とトピックの関係

Journal of Retailingで、この12月にAIリテールの研究を薦めるコメンタリーが出ました。(Shankar, V. 2018. How Artificial Intelligence (AI) Is Reshaping Retailing. Journal of Retailing, 94: ⅵ-ⅺ.)

いわゆるネット小売りだけでなく、リアルの小売店舗の経営にも、AIを適用した新しい変化が起こりつつあり、これを研究すべきとする主旨です。

同誌はマーケティング分野で実績ある論文誌です(ABSのAcademic Journal Guide 2018で上から二番目の4点評価)。AIを研究対象として真剣にとらえる姿勢が、経営学の各分野に広がっている好例と思います。

このコメンタリーでは、小売企業がAIで得られるメリットを、次のように例示しています。

1.モバイルを含めたオムニチャネルでの消費者行動の理解
2.個客に最適化した提案(アマゾンのエコー)
3.接客・顧客リレーション管理(ペッパー)
4.店内の個客経験価値の向上(店内ロボットによる顧客支援、現金レス決済)
5.個客対応窓口と決済マネジメント(チャットボット、ペイパル)
6.広告販促メディア最適化
7.在庫最適化
8.物流最適化・自動化
9.店舗清掃の自動化

そして、有望な研究領域の例として
(1)具体的なAI活用システムの設計と効果検証
(2)AI利用環境下での顧客行動のメカニズム
(3)AIを応用した、顧客行動の神経心理学的解析
を挙げています。

このコメンタリー自体は、引用文献もほとんどなく、著者の意見が内容のほとんどです。ビジネス雑誌等でも事例はもっと沢山出ていると思いますが、精緻に公開事例を拾ったわけでもなく、網羅的な整理でもない印象です。ただ、先行研究が無い中で、まずはとにかく「AIの研究をしてもOKだ」と提唱することが主眼だったのかもしれません。反論や突っ込みも含めて刺激を与える流れと言いますか。

このように、トピック主導で研究をドライブすることに対して、懐疑的な考え方もあります。「バズワードに乗って経営の流行語を研究するのは真の研究ではない。研究とは理論的貢献のためにあり、理論を磨く道具に過ぎないトピックがどうこうというのは、枝葉末節である」という考え方です。

AIと経営でも、研究である以上「AIの話を書けば何でも良い」とか、「AIのニュース的情報ばかり追い、より普遍的な法則性や現象の真相に貢献しない」のは、確かに本末転倒です。一方で、経営学自体がそもそも、「経営」というトピックを、他分野で発展した手法で研究する「トピックの学問」に近いものです。またニュース的な飛躍や関心を100%排除すると、既存理論に合わない現象があっても理論の埒外で扱われないままになってしまいます。AIを巡る経営学研究の動きは、こうした微妙な緊張関係を如実に示しているのかもしれません。

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